「健ちゃんが『逃げろ』って怒鳴ったから逃げた」
東日本大震災で命をかけて叫んだ人達が命を救った記録。
◇福島県相馬市 阿部新太郎さん(73)、妻洋子さん(67)
長男の健一へ。
消防団の副分団長として、お前は津波に襲われるまで避難を呼びかけ、多くの命を救った。
「健ちゃんが『逃げろ』って怒鳴ったから逃げた」という人が大勢いる。
震災直後は停電で、防災行政無線はうんともすんともいわねがったし、消防団が「命を救うとりで」だったんだ。
父ちゃんたちは、お前が救った人たちに感謝され、支えられているぞ。
暮らしていた地区で津波にのまれた消防団員は9人もいた。
副分団長が代々受け継いできた法被姿で健一が見つかったのは、2週間後で8人目、最後は分団長だった。
仲間が見つかるのを待ってたんかな。お前の顔は、きれいで、表情は誇りに満ちていた。
人間は助け合って生きるもんだと、命を張って教えてくれたんだ。
若い団員が「健一さんの遺志を語り継ぐため、辞めません」と言ってくれたぞ。
<東日本大震災>津波で決死の誘導、胸を張れ 長男へ
引用:毎日新聞
もし叫ばなければ命が救われなかった。
その叫ぶ瞬間は本当に少しの時間かもしれない。
だけれども、その少しの瞬間、どれだけの思いを込めて叫んだのだろうか。
これが小さなことだろうか。
本当に大きなことだ。