ご冥福をお祈りしますという言葉を使ったことがある方は多いかと思います。ご存知の通り、亡くなられた方に向けての言葉、お葬式で使う言葉です。
この「ご冥福をお祈りします」という言葉をキリスト教の人が使うことに、私は違和感がありました。
「冥福って仏教用語なはず。宗教が違うのになんでだろう。」と思っていました。
冥土の話を、お寺の住職だった祖父がしていたような。
結論から言うと、「ご冥福をお祈りします」をキリスト教の人が使うのはあまりよくないようです。
果たして「ご冥福をお祈りします」という言葉はどんな意味なのでしょうか?
《お悔やみ申し上げます》
《哀悼(あいとう)の意を表します》
この二つです。
詳しく知りたい方は読み進めてください!
「ご冥福」とはキリスト教では使わない?
「ご冥福」はキリスト教・浄土真宗などのご葬儀では、宗派の教義にそぐわないため、使わないようにします。
引用:イズモ葬祭
数ある葬儀社サイトやマナーサイト、お寺や神社、キリスト教サイトを見ても、冥福という言葉をキリスト教式のお葬式では使わないのが一般的とあります。
冥福ってそもそもどんな意味?
冥福とは「冥土で幸せに過ごしてねー!」という意味合いがあります。
さて。冥土ってどこでしょう?少なくとも天国ではなさそうですね。
冥土ってどこ?
「冥土は地獄、餓鬼、畜生をさす。この世で悪行を働いた者が罪や罰を背負って行く場所」とされています。
イオンのお葬式によれば、冥土は死者が行く迷いの世界、またはそこまでの道程を意味するとあります。
生前、この世において仏道修行を怠ったものが、死後さまよい行く世界。この迷いの世界は、地獄、餓鬼、畜生、の三悪道で、そこは暗く、苦しい世界なので冥土と呼びました。
引用:イオンのお葬式
死者の霊魂が行く暗黒の世界。冥界。
引用:weblio辞書
冥土は冥途(めいど)とも書き、冥界(めいかい)、黄泉(よみ)などともいう。死後、死者の霊魂がたどって行く道。亡者のさまよい行く世界。主として地獄、餓鬼、畜生の三悪道などをさす。中国ではこの冥土には閻魔(えんま)などの十王などがいて、生前の罪を罰するものと信じられた。日本では地蔵信仰と関連して、三途の川、賽の河原などがあると考えられた。
参照;日本大百科全書
冥土が「亡者のさまよい行く世界、地獄」ということを初めて知った方も多いのではないでしょうか?
「冥福を祈る」という言葉の意味は?
《冥福を祈る》とは、
《冥土(亡者のさまよい行く世界、地獄、餓鬼、畜生冥土)の旅を無事終えて、良い世界に転生できるように祈りますね》
という意味です。
なごみ庵寺(真宗高田派)浦上ご住職の言葉によると「《冥福を祈る》という言葉を厳密に解釈すると、亡くなった方が地下の暗黒の世界に落ちている、ということを前提にしている」とあります。
真宗興正派善照寺 三原住職は次のように書いています。
仏教では死後49日間は冥途(あの世へ行く道)をさまよい、生前の行いに対する裁きを受けるとされています。
「冥福を祈る」とはこの冥途の旅を無事に終え、成仏して幸せになるよう祈ることです。「冥福を祈る」というのは死後、暗黒世界に落ちていることを前提とした受け止め方で
「死んだら冥土といわれる闇の世界に行くけど、こっちでお参りしたり願ったりするからなんとかいいところへいってね」
という意味です。
引用:宗興正派善照寺 住職へんもブログ
「ご冥福」を使わない宗教・宗派
キリスト教で「ご冥福をお祈りします」と使うと、どうとられてしまう?
キリスト教式の葬儀で「ご冥福を」と使うのは、仏教式のお葬式のお焼香の際、十字架を切ったりアーメンを言ったりするのと同じだそうです。これはまずいですね(*_*)
<一般的>に適するのは「心からお悔やみ申し上げます」「哀悼の意を表します」の言葉です。
また一方で、キリスト教では神の元へと召されることだから「悲報」や「悲嘆」「哀悼の意」など悲しみの表現は避けて、「安らかな眠りをお祈りいたします」とした方がいいという話もあります。
カトリックの葬式では、故人の罪を神に詫びて許しを請い、永遠の命を得られるように祈ります。
一方、プロテスタントでは葬儀は神に感謝し、遺族を慰める為に行われ、故人ではなく神に捧げる祈りが中心となります。
参照:しらゆりセレモニーホール
キリスト教式葬儀 電報の場合は
神の御もとへ召された○○様が、
安らかに憩われますよう心よりお祈り致します。
○○様と私が出会えたことを神に感謝いたします。
安らかなお眠りを心よりお祈り申し上げます。
などが使われます。
神道
神式は故人は亡くなった後、子孫を見守るという守護神として祭るという意味を持っています。冥土、冥福という言葉は出てきません。
神式葬儀参考:九州のお葬式ナビ http://sousai-center.com/archives/381
浄土真宗
仏教の中でも浄土真宗は冥福という言葉は、教義が違うので使いません。
浄土真宗は臨終即往生、亡くなった直後に幸せになっているという教義です。
冥界を彷徨ったり心乱れることは在り得ない、ご先祖は光の満ちた浄土という世界に生まれられた仏さまであるとされているのです。
実はこれ仏教用語
「ご冥福」以外にも「供養」「成仏」「往生」「彼岸」「法要」「合掌」これらは全て仏教用語です。つい使ってしまうこともあるかもしれませんね。
全ての宗教のお葬式で使えるとされる言葉2つ
《お悔やみ申し上げます》
《哀悼(あいとう)の意を表します》
この二つです。
前述の通りキリスト教式ではこの言葉があわないともされていますが、日本では大きくとわれることは無いようです。
宗教用語は結構適当?!いやいや
宗教用語は同じ宗教、宗派だとしても、利用する言葉、意見が分かれることがあります。神教のHPでも「ご冥福」という言葉を使ってるサイトはあります(非常に少数派です)。
私の祖父のお寺では、仏像がある場所を神様がいる場所と言っていました。私も用事があるとき「神様の場所に行ってくる」といいながら その仏像がある部屋にいきました。教科書にも載るくらいの古くからの宗派なんですがね。これについて聞いてみましたが「なんでそう呼んだのか分からない」という回答でした(ΦωΦ)呼び始めたのは曾祖父かららしいですが。
冥土も旧約聖書の中のSheolというヘブライ語の訳語としても使用される用語という話もあります。
死んだ後に行く世界は宗教問わず冥土、冥土という言葉は霊界全体をさすという主張もあります。
冥土をGoogle翻訳で英語訳すると、
underworld 黄泉, 冥土, 下層社会, 悪の巷
Hades ハーデス, 黄泉, 冥界, 冥府, 冥土, 常世の国
other world 冥土, 他世界
realm of the dead 黄泉の国, 幽冥界, 幽界, 冥土, 冥府, 冥界
が並びます。
他世界とも訳されてしまうこともありますね。
ご冥福を使うとしたら亡くなれた方に使うものであり、「ご遺族のご冥福をお祈りします」は間違いです。
首相や政治家の方などが亡くなられた方々に対し、「哀悼の意」「お悔やみ申し上げます」と話すこともあれば「ご冥福をお祈りします」とも使うこともあります。
ちなみに 仏教式のお葬式で「天国で安らかに」は使えません
仏式の葬儀で「天国で安らかに眠れるように」と話したことはないでしょうか?
仏教には天国は無いんです。
地獄はあって、それに対するとしたら極楽です。
キリスト教の中で「極楽で安らかに眠れるように」とは言いませんよね。
その逆だということです。
最後に
今回、冥土について調べたら、そもそも同じ仏教でも宗派によって教義が違うこともあり、まとめるの苦労しました(*_*)
細かくやろうとしたらまとまるはずがないのです(ΦωΦ)・・・
《キリスト教のお葬式で「ご冥福をお祈りします」とは使わない》
という点においてまとめました。
まあ、たとえ宗教的に使ってはいけない言葉がお葬式のときに参列者から出てしまい、お坊さんや教会側が違和感を覚えてたとしても、わざわざその場で指摘することはほぼ無いと言っていいでしょう(少なくとも私は見たことはない)。あくまでお葬式の場、亡くなった方を思う気持ちは一緒ですからね。
ここにまとめたものは、ご参考までに(^^)
参考:
書籍 使ってはいけない日本語
大谷大学 仏教学
はすのはお坊さんの相談サイト
福島県神社庁
マイナビニュース
真宗興正派善照寺 住職 へんもブログ
YTV道浦俊彦氏
Tapbiz
イズモ葬祭
キャリアパーク
お供え造花
VERYCARD電報サービス
北のお葬式
英語部
マナラボ
葬儀屋さんのブログ