1.看護師はどんな人?
こんにちは。病気になりましたら皆さんは病院に行きますよね? 病院に行ったら、看護師が迎え入れてくれ、病気が治るサポートを様々にしてくださると思います。唐突な質問かもしれませんが看護師と聞けば、皆さんはどのようなイメージがあるでしょうか?
明るく、清潔、優しい。
そのような素敵(すてき)なイメージが強いと思います。
しかし、この看護師という職業、実は今から約150年前には酒飲みがする、卑しい職業だったのを知っていますか? それも看護のことをちゃんと学んだ人がいなかったため、病院に行ってもまともな看護を受けられず、病院では40~60%の人が死んでいました。
そのような見るも無残な看護の状況を今の病院の姿に変えた一人の人物がいました。
図1.1854年ごろのナイチンゲール
それが今回のコラムの主人公であるフローレンス・ナイチンゲール(図1)です。
ナイチンゲールは看護の仕事が絶対に必要だという信念を持ち、看護の仕事に多くの改革を起こしました。たとえば、看護には清潔な環境が必要不可欠として、当時不衛生で閉鎖された病室を明るく清潔な病室に作り替えました。クリミア戦争では、病院の環境を清潔に整えたことによって、死亡率が5人に2人だった状況を20人に1人にまで減少させることに成功しました。
そして、ナイチンゲールは看護師の教育にも力を入れました。看護師養成院を設立して優れた看護師を養成し、世界各地に送り出しました。ナイチンゲールに育てられた看護師たちの活躍は、150年前の当時に持っていた看護師は卑しい仕事というイメージを覆すのに大きな役割を果たしました。また、ナイチンゲールが看護に必要な心得をまとめた看護覚書は今でも看護の基本として多くの看護師に読まれています。
このようにナイチンゲールが看護に対しての功績は膨大です。まさに、彼女のおかげで現在の看護の土台が成り立っているといっても過言ではありません。
2.苦難の生、家族は分かってくれなかった
それでは、看護に対して多くの革命を起こしたナイチンゲールの生はいつも順風満帆だったでしょうか? 実はそうではありませんでした。特にナイチンゲールは家族からの理解が得られずに、看護師になることを反対され、その道は大変な苦難の道でもありました。
なぜ、ナイチンゲールの家族はナイチンゲールが看護師になることを反対したのでしょうか? 実はナイチンゲールの家は裕福な貴族の家でした。当時の貴族の女性と言えば、働かずに、素敵な家柄の男性と結婚しさえすれば良いという考えが主流でした。そんな女性が働くという考え方がない時代に、働きたい、それも当時一番卑しい仕事の代表である看護師で働きたい。そうナイチンゲールが言い出した時、彼女の家族が反対する姿は容易に想像できるかと思います。
しかし、家族に反対されてもナイチンゲールは諦めませんでした。絶対に看護師の職業は必要だという信念の下、彼女は看護師の勉強を続けてました。ある時は家族に隠れてこっそりと、ある時は疲労で倒れながらも、彼女は看護師になることを諦めませんでした。こうした彼女の地道な努力により、彼女に味方する人たちが少しずつですが現われるようになりました。そして、最終的にはナイチンゲールの努力、執念に彼女の両親も屈服してナイチンゲールが看護師になることを認めます。
3.一粒の種で多くの実を結ぶ
ここで聖書を読んでみましょう。聖書にはこのような聖句があります。
よくよくあなたがたに言っておく。一粒の麦が地に落ちて死ななければ、それはただ一粒のままである。しかし、もし死んだなら、豊かに実を結ぶようになる。(ヨハネによる福音書/ 12章 24節)
この聖句は麦を使った人間の比喩です。麦畑も一粒の麦から始まり、最後には多くの実を結ぶようになる。これと同じく、人間も代表者一人によって全体がその恩恵を享受するようになることを解いています。もし死んだならと記載されていますが、ここでいう死ぬとはどういうこでしょうか? 今回のナイチンゲールの例を使うならば、分かって貰えなくてもやりぬくことではないかと、筆者は思います。
人は自分の知っている範囲でしか判断できません。たとえ、本当に正しいことだとしても、知らなければ反対することがあります。現にナイチンゲールの家族も当時の常識で考えてナイチンゲールを反対しました。もし、ナイチンゲールが家族の反対に従っていたなら、現代の看護師の姿はなかったでしょう。
分かって貰えなくても、ナイチンゲールが最後までやりぬいたからこそ、看護師は人の命を活かす名誉ある仕事であると認知され、多くの人が彼女が切り開いた道の恩恵を受けて生きています。まさにナイチンゲールという種の努力と労苦により、多くの看護師が実を結び、世界中で活躍するようになりました。
分かって貰えない苦痛は時に身を切る以上の痛みがあると思います。しかし、それでも信じた道があるのでしたら、それをやってみたらいかがでしょうか。
つらく大変だとしても種の生を歩む私たちになることを祈ります。
冒頭画像出典:Steemit